盛岡が舞台となった文学作品

高橋克彦「炎立つ」

壮大なスケールで描く傑作歴史小説

『炎立つ(ほむらたつ)』は、盛岡在住の直木賞作家高橋克彦さんの作品で、 NHK大河ドラマの原作。 平安時代末期、みちのくで黄金の王国を夢見た男たちの野望を描く、全5巻の壮大な歴史ロマンです。 盛岡が舞台となるのは、第3巻『空への炎』。

安倍氏対源氏、存亡をかけた宿命の闘い「前九年の役」最終激突 。 戦場は一路北へ、そして舞台はついに「前九年の役」の終章、厨川(くりやがわ)の柵へ。 康平5年(1062)9月15日、藤原経清と安倍貞任ら安倍一族が立てこもった厨川、 嫗戸(おばと)の2つの柵に源氏・清原連合軍が到着。 戦場に生きる人々の愛と哀しみをたたえながら、凄絶な戦いが始まります―。

盛岡西部には、安倍館、 厨川、前九年、館向など安倍氏の最後の館・厨川の柵にちなんだ地名が多く残っています。 厨川の柵は、いまだに考古学的には「ここだ」とはっきり証明されていませんが、 安倍館から天昌寺の地下に埋もれている可能性は高いといいます。 高橋さんは、 「まだまだ安倍氏については、疑問やなぞが多い。 わからない部分、見えない部分が多いだけに、歴史の再構成は確かに大変だった。 しかし、それ以上にワクワクしたものであったことも事実だ。 現在、私は盛岡に住んでいる。 この同じ空間にいろいろな人々が生きていたという実感。 それは大きいものがある。」 と語っています。

『炎立つ』全5巻 高橋克彦(1992~1994年NHK出版発行・各1500円・1995年講談社文庫化)