プロフィール 中津文彦・なかつふみひこ(1941-) 岩手県一関市生まれ。一関一高、学習院大学卒。 岩手日報社入社後、報道部、東京支社編集部、校閲部等を経て、 昭和57年『黄金の砂(出版時は『黄金流砂』に改題)』で第28回江戸川乱歩賞受賞。 同年末、退社して創作活動に専念。 昭和60年『七人の共犯者』で第12回角川小説賞を受賞。 主な著書に『黄金流砂』『七人の共犯者』『遠野物語殺人紀行』『疑惑の演出者』など。 |
ペンネーム中津文彦(本名は広嶼文彦)の「中津」は、
ちょうど家の傍を中津川が流れていたことが意識にあったとか。
特に歴史をからませた推理小説に冴えをみせている中津さんの、
最初の小説との関わりは、病弱だった子どもの頃、
父親の本棚から大人の本を引っ張り出して読んだこと。
20歳くらいでサン・テグジュペリ読んだとき、小説を書きたいとはっきり意識。
大学を出て就職という時期には「テグジュペリのように飛行機乗りになって小説を書こう」と決意し、
お父さんに猛反対されたというエピソードも。
結局新聞記者になり、仕事にのめりこんでいた時期もありましたが、
記事を書かない部署に配置転換となってしまった時期、
十数年ぶりに「小説を書いてみよう」という気持ちに。
その時よみがえってきたのが、不自由な闘病生活をしていた子ども時代、
お父さんが眠くなるまで話してくれた平安末期の歴史物語。
そして、平泉の終焉をモチーフにした『黄金流砂』で見事江戸川乱歩賞を受賞、ベストセラーに。
退社して執筆活動に専念することになります。
「歴史ミステリー小説家」という看板をかけられるのは好まないけれど、 自分自身の興味の向くところとなると、 やはり歴史もの。 作品を続けて発表していく中で、関心が非常に強くなってきたのが郷里、 つまり広い意味での岩手県の中央から南部にかけてのエリア。 さげすまれ、虐げられてきた東北の側から 東北古代史の真実の姿が認知され日の当たる瞬間を東北の側から見たいということが、 自分の書く小説と、ふるさととのかかわり合いのようなものだそうです。 歴史ミステリーの場合には、歴史のいろんな現象を、常に体の中に留めておいて、 いろいろと考えていくうちに、 それまでの疑問が自分の胸の中で解けていく感動が大事だといいます。 生まれて育った地域を、自分の中で大事にしながら仕事をしていきたいという中津さん。 これからもどんな作品を書いてくれるのか楽しみです。 北上書房刊 「10人の作家ふるさとを語る」参考 |